土木技術者を目指す人へ

●「土木」について

●土木という天職

土木技術者でありたい、あるいは土木技術者になりたいと考える人にとって、「土木」とは何かを考えることは、もう一つ重要な仕事です。

人は言葉によってものを考え、またコミュニケーションも可能となります。言葉の意味を正すこと無しに、事は成りません。

今更言うまでもありませんが、土木は古今東西を問わず、大変広範囲にわたる技術であり、社会的に意義深く、天職と言える責任の重い職業です。

社会資本は、社会生活や経済活動の基礎となる、今も昔も不可欠なものです。

しかしながら建設業者にその責任の自覚と社会の求めに応じる能力が無い場合には、土木という天職に携わるべきではありませんし、淘汰されることは当然のこととなります。

●「土木」という言葉の由来

中国漢代の武帝の時代の淮南の王が編纂した「淮南子」(えなんじ)という書物に「聖人乃作為築土構木・・・・而百姓安之(聖人が土を築き木を構えて・・・・百姓を安んじた)」とあり、これが今のところ土木という語の由来の定説とされています。

日本に於いても弘法大師等の潅漑事業や河川改修が彼方此方にありますが、土木は中国漢代においても、災害を防ぎ民心を安んじる聖人の仕事でした。

●土木と建築

「准南子」(えなんじ)の築土構木には現在の建築の概念も含まれていました。明治以前の日本語の土木という語に於いても現在の建築の概念が含まれていました。

土木という語は鎌倉時代の「源平盛衰記」に於いて最も早く日本の書物に現れます、東大寺の建立を叙述したところで「土木(ともく) ノ造縁」と記されていて、現在の建築の意味で用いられていました。同様の言葉として室町時代から普請(仏教用語で普(あまね)く請(こ)い他力にて事を成す)という言葉が現在の土木建築の意味で使われていました。

一方、建築という言葉が書物に見られるのは幕末以後です。現在の意味で使われ始めたのは東京大学の建築学科が造家学科という名でスタートし、その後明治十九年に英語の Architecture (アーキテクテュアー ) の訳語として建築という語をあてて使い出したのが始まりです。英語における Architecture (建築)には土木、造船、建築、兵器、芸術等の技術全般に亘る概念が含まれています。Civil Engineering は英語で土木を意味する言葉であり、 Civil =市民、つまり軍事ではない、市民のための構造物を造る技術といった意味も有ります。

このように明治以前には土木と建築は特に区別されていなかったようです。明治二年に建設省の前身として土木司が設けられ、国策として都市基盤整備、道路、港湾、上下水道、河川等の現在の土木工事を土木司が主として行ったために、土木という言葉は徐々に限定的に使われるようになり、昭和の初期には専門家の間においては現在の使われ方になったようです。

未だに一般の間では土木と建築は曖昧な使われ方がされていますが、土木と建築は街路と建物のように一体となって存在し、一体的に計画されることが望ましく、技術そのものを区別する必要はないと考えます。

●土木(建設業)に求められているこ

21世紀の日本の公共事業は、投資効果がより強く意識され、仕事は大きく減少し、発注者の仕事の外注化・民営化が進むものと見られます。従来の業務の外に資金調達、企画、地元対応、維持管理が民間の仕事となります。設計施工 (D.B= デザインビルト ) やC .M( コンストラクトマネージャー ) 、P .M( プロジェクトマネージャー ) も増加すると考えられます。

現在の日本の状況は、明治期に日本の国が近代化を目指した時と同じように、土木技術者の知識や技術に大きな期待がかかっていると言えます。この期待は顕在化してはいません。

社会資本の整備は、国の経済が危機的であっても不可欠です。状況が危機的であればあるほど、工夫が求められ、能力が発揮でき、評価されるチャンスとなり、その成果は大きいと言えます。

以前と同じことをしていて同じ結果が得られる訳ではありません。自分を含め、人や周囲の環境は常に変化をしています。

企業や人が社会から必要とされ、存続する為には、如何なる状況下にあっても、社会が何を求めているかを知り、常に求めに応じる工夫をすることです。

そして変化を恐れずに、変化を楽しむことです。

朝日土木株式会社

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